[ カノン ]

古びた石畳に、乾いた靴音が響く。
僅かに差し込む光は、息を切らしながら走る人影を、遺跡の壁面に映し出した。

「・・・ッ、は・・・ッ、はあっ、はあっ、はっ、はぁ、はー・・・ッ」

魔物との交戦中、不意に鼓動の昂ぶりを感じたカノンは、身を翻して逃げ出した。
ここまでくれば・・・、と、壁に凭れながらカノンは呼吸を整えた。
だが、しゃがみこんでもなお、彼女の息は荒く、激しさを増していく。
わかっていた・・・。
この動悸は、走ったためなどではない。
次第に顔も火照りだし、耳たぶまで紅く染まっていく。
それでもなお、カノンは己の体の昂ぶりを鎮めようと、体を抱え込んだ。
「ふぁッ!・・・はぅうっ!」
しかしそれも、上気した肌を一層刺激したに過ぎなかった。
しっとりと汗ばんだ肌は、触れるだけで電流が流れるような感覚に襲われる。
ツンと上を向いた乳首は、服の裏地に擦られ、ぴくぴくと蠢きながらその硬度を増した。
「ダ・・・、だめぇ・・・、やっぱり、ダメェ・・・」
普段の彼女からは考えられないような切ない声でしゃくりあげると、
留め金を外すのももどかしく、上着の襟を引き裂いた。
途端に、豊かな胸が弾むようにこぼれ出る。
「ぁはあ・・・っ、くふぅんっ、はぁんっ、ぅん・・・」
タイトな服から開放された乳房を、嬉しそうに片手で揉みしだきながら、
もう片手でせわしなく下着をずりおろした・・・。

シルエット(義体)。
カノン自らが、魔物との戦いで失った肉体を補うために手に入れた、造られた肉体。
既に体の大半は、シルエットに組替えられ、彼女の戦闘能力は文字通り超人的と言えるまでに高められた。
しかし、ベースは生身の人間である。
後付けである機械体との折り合いをつけるためには、少なからぬ犠牲が必要だった。
それが「発作」・・・。
通常、人の女性に訪れる月経、機械の体には当然それは起こらなかった。
月のものを煩わしく思っていたカノンにとってはむしろ歓迎すべきことだったのだが、
そのかわり、ほぼ同様のペースで、激しい情欲に襲われるようになったのだ。
「それは恐らく、機械体によって失われた生命力を、本能的に補うため、脳内麻薬が
過剰分泌されるためだろう・・・。」
シルエットを手がけたマイスターは、「発作」で自制を失い、あられもなく乱れたカノンを抱いた後、そう説明した。
乳房や性器など、細部にわたって造りこまれているのも、この「発作」ためだと言う。
人間としての自分自身に潜む、どうすることも出来ない欲望の大きさに、カノンは歯噛みせずにはいられなかった・・・。

「っはあ・・・ッ!はぅうっ!くはぁんん!ふうぅっ、あぁんッ!」
聞く者がいたなら、思わず顔を赤らめずにはいられないようなはしたない喘ぎ声を上げながら、
カノンは夢中で乳房を揉み、股間を弄った。
全身は汗で湿り、股間からの滴りは内股をびっしょりと濡らし、石畳に雫を撒き散らした。
普段は煩わしく思っている「人間らしい」機能も、この時ばかりは格別の味だった。
次第に表情には恍惚が浮かび、普段の鋭さが失われた瞳は蕩けるような光を湛えていく。
「はふ・・・、もぉ、らめぇ、・・・お、おかしく、なるぅぅ・・・」
自慰によって最後の理性も弾け飛んだカノンは、左腕に組み込まれた装備の一つ、極太バイブを取り出した。
マイスターがお節介で取り付けたもので、そのときは絶対につかうことなどない、と
啖呵を切ったものだったが・・・。
「はふ、はあ、はぁっ、・・・あ、ぁ、あぁんッ!!」
バイブの齎す快感への期待感から手が震え、上手く挿入出来ない。
濡れそぼった陰唇は、バイブに吸い付くようにヒクヒクと物欲しげに蠢いた。

「ふひゃあぁぁんっ!! あんっ、あん、はんっ、くふぅっ、はふぅぅん!」
すぶりっ、とくぐもった音を立ててバイブが膣に飲み込まれると、カノンは少女のような嬌声を上げ、たちまち絶頂してしまった。
マイスターの設計したバイブは、巧みにカノンのツボを攻め上げ、膣から愛液を溢れさせる。
白い尻を振りながら、更なる快感を求めて、カノンは一層腰を振り、バイブを動かした。
カノン自身と連動しているバイブは、彼女自身の呼吸や鼓動に合わせ、
それ自身意思を持っているかのようにうねり、膣壁を擦り上げ、子宮口を突き上げた。
「はぐぅ、らめっ、いくッ、ぁあ、はあ、くひぃ、ま、また、イ、イク、イッちゃうのぉぉ!」
ついにはバイブに貫かれたまま、床にのたうち、体を痙攣させ、失神や失禁まで繰り返した。
カノンの「発作」は、およそ数時間にも及んだ。

ことが治まり、激しい脱力に襲われながら、カノンはのろのろと身支度を整えた。
床に広がる愛液や失禁の跡を見ると、自分でしたことながら羞恥で身が震えた。
のみならず、最近は「発作」に襲われるサイクルが、そしてその強さが、次第に増してきている気がしていた。
(私は・・・、どうなってしまうのだ・・・?)
自制を失い、本能の虜になってしまう漠然とした不安感・・・。
しかし心のどこかに、その時の訪れを望んでいる自分がいることも、微かに意識し始めていた。

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