その強い香水の匂いを嗅いだ時、健一は香織の気配を背後に感じた。振り向くより早く香織が声をかけてきた。

「あら、お疲れ。」
 
「お疲れ様です。」

香織は窓の外の風景をぼんやり眺めながら、ゆっくりメンソールの煙草を取り出した。

「しかし、あんたも大変よねぇ、急に契約打ち切りなんて・・・」

「ええ。仕方無いですよ派遣の人間なんてそんなもんですから。」

健一は静かに缶コーヒーを置いた。カタン、という乾いた音が二人だけの空間に響いた。

「まぁ、諦めて早く次のとこ探すことね。」

「そうですね・・・。」冷たい香織の言葉にムッとしながらも表情に出さず健一は静かに答えた。

窓の外には向かいのビルの明かりがまだ所々についていた。

 健一が今の職場に派遣されて約一年が経つ。社員と異なり嫌な人間関係に関わることも無く、

働いた分だけ金になる派遣の仕事に健一はそこそこ満足していた。しかし、ここの仕事は別だった。

今まで利点と考えていたものが全て裏目に出た。金は安い上に、仕事はきつく、さらに人間関係も最悪だった。

しかも数週間から健一の担当しているクライアントが不況の影響により業務縮小とのことで、健一にそのしわ寄せがきた。上司からは

色々取って付けたような理由を言い渡され、結局健一はこの職場を辞めざるを得なくなった。

「まだ帰んないんですか?」

「そうよ。今度の新規立ち上げの仕事がまだ残ってるの。早く進めておかないと。」

香織は最後の煙をはき終わると煙草をもみ消した。

「そうだ・・・。」

一瞬健一はドキッとした。

「悪いんだけど、私の机の上にある書類をそれぞれ100部ずつコピーしておいてくれない?それと、机の上の

ゴミなんかも片付けておいてほしいんだ。お願いね。」

そう言うと香織は喫煙室を後にした。

(くそ、最悪だ。こんな所にいないでさっさと帰っておけば良かった)

香織の吸った口紅の付いた吸殻を見つめ健一は思った。

 香織は派遣先の社員だった。直接仕事を一緒にする機会はさほどなかったが、仕事中の彼女の言動を

近くで何度か耳にし、その気の強さに健一は辟易した。

<上司なら高い金もらってんだからそのぐらいするの当たり前でしょ?ちゃんとやって下さいよ>

<へぇ〜、めずらしいね、お前もちゃんと間違わないで仕事出来るようになったんだ。馬鹿じゃなかったんだね>

そんな言葉を上司や後輩に言ってるのを健一は知っていた。

嫌な女だな・・・。 それが健一の香織に対する印象だった。年齢は20代とも30代ともとれた。完璧なまでの

濃い化粧をいつもしていた。
 



 香織にいわれた仕事や片付けを終え、健一はオフィスを後にした。

 エレベーターを降り、守衛室の前を通りかかった時、健一はデスクの上に携帯電話

を置き忘れたのに気づき、引き返した。

 「あら、まだ居たの?」ポーチを小脇に抱えトイレから戻ってきた香織と出くわした。

「ええ、携帯忘れちゃって・・・」

「そう・・・。よかったら仕事してかない?まだたくさん残ってるわよ。」

「いやあ、今日はもう勘弁してくださいよ。」

誰もいないオフィスに香織の笑い声だけが響いた。

「私、マネジャー探しに会議室いってくるから。」

香織はそう言うとポーチをデスクの上に置き、その場から離れた。

「分かりました。それじゃ、本当にこれで・・・。」

健一は置き忘れてあった携帯をポケットにしまった。誰もいないオフィスは恐い程の静寂に満ちていた。

と、その時だった。

小さな電磁音とわずかな振動がどこからか伝わってきた。

(何だろう?)耳をすますとその音は香織が置いていったポーチの中から聞こえてきた。そしてその音に合わせて

ポーチが小刻みに振動していた。

ウィーン、ウィーン・・・

物音一つ無いオフィスの中で、その音だけが立体感をもって健一の耳を刺激した。健一は辺りを見回してから

ポーチのファスナーを開いた。そこには置いた拍子に作動しだしたミニローターが苦しく蠢く毛虫のような動きを見せてあった。

健一は震える指でファスナーを閉め、急いでオフィスを後にした。
 
 <淫乱だな> 帰りの車中、健一はさっき見たバイブの事をずっと思い出していた。身近で一緒に仕事をしている女で、

実際そういうものを使っている者を目の当たりにすると、その興奮はまた特別であった。

 駅を降り帰宅途中、近所の神社にさしかかった時、ふと桜の花が目についた。漆黒の夜の闇に浮かび上がる

そのピンクの花びらは妖しく健一を誘った。境内に一人腰を下ろし、途中で買った缶ビールを飲みながら月明かりに照らし出された

その美しい桜を健一は見入った。時折風が吹き、花びらが健一をやさしく包み込んだ。健一は昔読んだ本の一節をふと思い出した。

 桜は人を狂わせる・・・

仕事中は偉そうに上司に意見したり後輩イビリに精を出してるくせに、一人になれば寂しくて会社の便所でオナニーか・・・。

(へへっ、お笑いだな・・・)

血液中に溶け出したアルコールが全身に渡り、鼓動が速まった。

 どの位時間が経ったのか、健一は桜と自分が一体化している様な感覚に囚われた。

そして知らぬ間に意識が途切れていた。
 
ある日の午後、健一はマネージャーに呼び出された。

「実はうちの山崎が忙しくてどうしても手が離せないって言うんだ。そこで急遽悪いんだが山崎の変わりに出張してもらいたいんだ。」

「自分で大丈夫ですか?」

「クライアント先に挨拶程度に顔出しして、軽く打ち合わせするだけだ。君は山口のサポートに付いて行くだけでいい。

君もうちの仕事はこれが最後になるだろう・・・」

山口香織の名を聞いて健一は動揺した。

「この件に関しては既に山口に話してある。詳しいことは彼女に聞いてくれ。」

「分かりました。」

健一は香織と初めて二人きりで仕事をするということに戸惑った。

(よりによって最後の仕事があいつとか・・・)

健一の頭の中には生々しいあのバイブの音がまだ鳴り響いていた。

 帰り際、健一は香織に呼び止められた。

「話はマネージャーから聞いてます。」

「そう。別に何も心配する事はないわ。商談は私の方で上手く進めるから。早く終えて、帰りはドライブでもして帰りましょう。

それにあなたには話したい事もあるし・・・。」 珍しく香織の顔に笑みがこぼれた。



 
 東京から車で数時間の所にその工場はあった。

ブラインドから差し込むやわらかな春の日差しはのどかな田舎町を引き立たせ、何の飾りも無い応接室と古い湯飲み茶碗が

ここが都会の会社ではないことを再確認させた。

 発注先のこの生産工場で実際にラインを見てくるというのが今回の仕事の一つであった。

「わざわざ遠い所、ご足労いただきご苦労さまでした。」スーツの代わりに作業着姿の工場長が深々と頭を下げて我々を見送ってくれた。

「マネージャーの言った通り心配なかったでしょ?」

HipHopの軽快は曲に合わせながら香織は煙草に火をつけた。

 手短に仕事を終えた二人は、地元の名所や上手いものを食べてまわった。

 香織の食事する姿をまじまじと目にした健一は、その肉感的な唇の動きに興奮を覚えた。上着を脱いだ香織の胸は驚く程大きかった。

いつもはスーツの下に隠れて気が付かなかったが、お碗型のその胸はゆうにDカップを越えていた。少し身体を動かすたびにその胸も生き物の様に合わせて揺れた。

 普段は嫌な女として通ってる香織ではあったが、こうして一日、二人っきりで行動を共にしていると女を意識せずにはいられなかった。

いつもは鼻をつく香水も今日は甘く感じた。手を伸ばせばその肉体はすぐそこにあった。

 日が落ちると闇は急速に深まった。田舎の闇は想像以上に濃く、そして強かった。車の外から見える風景はほとんど無く、黒の世界がひたすら続いた。

音楽を消した車内には、車体の風を切る音が聞こえてくるだけだった。

 「ねえ、健一くん。この間、話があるって言ってたでしょ?実はお願いがあるの。

健一くんと同じところから派遣されてきてて隣の部署に配属されてる子がいるでしょ?」

「ああ、宮本ですよね。」

「そう。悪いんだけどさあ〜、彼の事紹介してくれないかなぁ〜。彼、ちょっと私好みなのよね。ほら、健一くんうちの仕事もう辞めちゃうじゃない?

だからその前にちょっとお願いしてもうらおうかと思って・・・。こういう話会社じゃしづらいからさ・・・。」

(何だ?俺が会社辞めるのをいいことにダシに使おうってのか?)

「話ってそれですか?」

「そうよ。何だと思ったの?えっ?嫌ね〜、まさか私が健一くんを口説くとでも思ってたの?冗談止めてよ。馬鹿ねムリムリ。」車内に香織の笑い声が響いた。

健一の血が一気に逆流した。毛穴が開いて汗が噴き出した。今までわずかながらでも抱いていた女としての香織への意識が怒りへと変わった。

 「あっ!見て桜よ。」香織は声をあげた。

車を止めると香織は歩き出した。見渡す限り、見事なまでの満開の桜である。空には満月が光々と輝いていた。

辺りに音は無く、世界が止まってしまったかのようだった。

健一はゆっくりと香織の後をついていった。鼓動が乱れ息苦しかった。口の中が乾いた。

 その時、風が吹き、桜の花が舞い飛んだ。

 桜は人を狂わせる・・・

「キャーッ!」

悲鳴と共に香織は倒れこんだ。健一は香織を力任せに蹴りつけた。

「痛っー!」

香織は足首をおさえ、うめきながらその場にうずくまった。

「舐めやがってコノヤロー!」

香織はおびえながら上目遣いで健一を見た。

「いい気になりやがって。宮本を紹介しろだと?よくもそんなことが言えたな。今まで散々こき使ったくせに、いらなくいなりゃ首切りでハイ、さようならか?」

「それは私の責任じゃないわ・・・。」

「うるせえ!」

健一は香織のブラウスに手をやり、思いっ切り引き裂いた。

「いや!止めて。」

「何だと?お前が淫乱だってことぐらい既に承知なんだよ。このスケベ女が!」

健一は香織のブラを外し、大きな熟れた果実のような乳房にくらいついた。

「うくっ・・・」香織はうめき声をあげた。

思い切り吸い上げると乳首が小指の頭大に固く大きくなった。

「楽しませてもうらうぜ。」

健一は香織を上向けにさせるとそのまま両の足を持ち上げ、パンツを脱がせ下着を一気にめくり取った。

性器と桜の匂いが溶け合って辺りに流れ出した。濃い陰毛におおわれた香織の性器は見慣れぬ生き物のようだった。

健一はネクタイとベルトを外し、両の手首をM字型に開かせた香織の膝の裏にそれぞれ結び付けた。

「ほら、よく見せてみろ!」

親指と人差し指でゆっくり性器を開くとそこから細い何本かの糸を引いた。

「スケベなおまんこだなぁ。もう濡れてやがる。仕事ばかりで男と付き合う暇も無いから、色だけは桜みたいにピンクだな。」

「嫌っ!見ないで。」

「会社にいる時と違って随分しおらしいな。もっとお前の本性さらけ出してやる。」

健一はそう言うと車へ足を向けた。




「思った通りだな。何だこれは?」

健一は車から持ってきた香織のポーチの中から例のバイブを取り出した。

「どうしてそれを・・・。」

「お前がこれを使って会社の便所でオナニーしてることぐらい知ってるんだよ。今日は俺が手伝ってやるからな。」

スイッチを入れるとバイブの振動音が闇の中に響いた。一気に押し込むとすでに濡れている香織の性器は容易く根元までバイブを飲み込んだ。

「うっ、くっ・・・。」

「へっ、どうだ気持ちいいのか?今度はいつものそのへらず口に俺のをぶち込んでやるぜ。」

健一は固く勃起したペニスを一気に香織の喉の奥へと突き入れた。

「グホッ!」

香織の目から涙が流れた。

「ケッケッケッ」

健一の笑いが空気とその周りの桜を揺らした。

「ゲホ、ゴホ」

勢いよく咳き込むとその力でローターがぬるりと抜け落ちた。

「何だせっかく入れてやったのに。それで満足できないんなら本物をくれてやる。」

健一は香織を四つんばいにさせた。しかし、両手の自由が利かない香織はバランスを崩し、地面に顔から突っ込んだ。.

「ううっ・・・。」

顔面を土まみれにした香織はわずかに顔を横にずらし、かろうじて呼吸をしていた。

健一は尻をグッと上に突き上げさせ、そのままバックの体勢から香織の性器に挿入した。両手で香織の腰をつかむと健一はそのまま激しく腰を振り始めた。

パンパンパンという陰嚢が尻にあたる音がリズミカルに夜の闇に鳴り響いた。

「あ〜、うっ、あ・・・」

甘える様な声が香織の口から漏れた。

「気持ちいいんだろう?偉そうな顔して仕事してても、会社の便所でオナニーしてる淫乱女だもんな。」

 なおも健一は腰を打ちつけた。突き入れ、そして引く度に香織の膣ヒダが健一の亀頭全体に包み込む様に絡み付いた。徐々に呼吸が荒くなり、

身体全体に熱が伝わってきた。全身があたかも性器になってしまったような感覚に襲われた。突然、呼吸が止まり、一瞬身体が縮小したと思った次の瞬間、

健一は月に向かって吠える獣のような声をあげ、激しく香織の中に放出した。
 



 香織の顔はさらに土まみれになっていた。

「いつもは綺麗に化粧してる顔もこれじゃ台無しだな。」

放心したのか香織はグッタリした様子でそのまま力なく地面に伏していた。

「枯れないように様に俺が水を与えてやるよ。」

健一は香織の顔面めがけ勢いよく放尿した。

「 ウゴ、ゲホ」

口に入った小便にむせ返った香織は吐き出しながら激しく咳き込んだ。

香織は顔を左右に振ったが、その動きに合わせる様に健一はさらに香織の顔へ放尿を続けた。

「痛っ!目にしみる。」

「ケッケッケッ」

 風が吹き、桜が激しく舞い散った。 銀色の月の光が二人を照らしていた。

香織の興奮した花弁は厚く肥大し、その色は周りに咲くどの桜より鮮やかなピンク色をしていた。

 桜は人を狂わせる・・・

 健一はひとしきり小便を出し切ると何事も無かった様に満足した顔でそのままその場を立ち去った。 (了)


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